2022年10月25日

出展作品募集中 第9回文化美術展(11月10〜13日)

 建築ネットワークセンター主催の第9回文化美術展は11月10〜13日、新宿区中央公園内のエコギャラリー新宿1階展示ホールA室で開催されます。アートの形態を問わず、多彩な作品が並ぶ同展。毎回、来場者を楽しませてくれます。10月末まで作品を募集しています。出展料は一区画(幅1b、高さ1.5b)2千円。詳細はお問い合わせください。03(6457)3178

posted by 建築ネット at 14:09| お知らせ

専務理事に古橋理事を選任

10月13日に開かれた建築ネットワークセンター理事会で、秋葉千秋専務理事(現理事)の後任として満場一致で古橋温夫理事の専務理事就任を承認しました。古橋専務理事は2014年に建築ネット事務局に入り2017年から事務長を務めてきました。
続きを読む
posted by 建築ネット at 13:18| ニュース

2022年07月15日

チャールズ・ディケンズ「二都物語」

最近読んだ本 2022.6.3 チャールズ・ディケンズ「二都物語」 訳:中野好夫 筑摩文庫
1984
年の出版で定価360円だ、紙が茶色くなっただいぶ古い本だ、内容はさらに古く18世紀末フランス革命の時代、イギリスではビクトリア朝、産業革命前のロンドンとパリを跨いだ、現代で言えばフォーサイスや007のイアン・フレミングなどのバイオレンスに満ちたスパイ物サスペンスの原型というところだ。なぜこれを読んだかと言うと、近代化以前の都市がどんなもので、人は何を思って生きていたかそんなことが少し見えて来るかと思ったのだ。絶対王政の封建時代に人民が極限の抑圧を受けテンションが抑えきれなくなって、ギロチンで全ての権力側人間の首を落とそうとする急進的な革命が起こり、さらにその恐怖政治に反革命の振り子が動く状況は感じ取れるが、ストーリーはぎこちなく思想的にも深みがない。私は2009年に両都市を歩いたが、距離の近さ気質の違いがはっきり分かった、この頃の歴史経緯の違いが大きく影響したのだろう。ディケンズは「クリスマスキャロル」をあのロレンスの「チャタレー婦人の恋人」翻訳で騒がれた伊藤整さんが大学の英語講義のテキストにしていた、文学者らしいきれいな目の人だった。
鈴木志朗

posted by 建築ネット at 11:06| ニュース

2022年04月28日

ジェイン・ジェイコブス都市論集

ジェイン・ジェイコブス都市論集 Vital Little PlansThe Works of Jane Jacobs

編:Samuel Zipp & Nasan Storning 訳:宮崎洋司


この本は「アメリカ大都市の死と生」に集大成された、著者がヴォーグ、ニューヨーク・タイムズ・マガジン、アーキテクチュアル・レビユーなどに書いて来た都市論と、その後も探求した都市経済学のサブテキストである。高層オフイスビルについての対談で、中心部にステータスとして建てられた高層ビルは捨てられ、大企業は郊外の倉庫のような広いスペースに移動している、データ通信の発達で集中した場所でビジネスを行う必要はなくなった。しかし高層ビルは他用途への転換には向かず、都市中心部の荒廃と郊外の搾取によるインフラ整備予算への圧力の原因となる。都市を経済活動の面から見るにはケインズのようにマクロな統計を分析し、演繹的に一つの結論を出すやり方は具体的にどの都市にも当てはまらない。方向を決めずに都市内の局地的な商業の動きなどミクロなものを積み上げて、遠い結果を見ず短いスパンで考えねばならない。それ故立地条件、歴史、住人の人種を含めたメンタリティーなど極端に多い変数を持った都市に対して国、州など上位の自治体が方針を決めて予算を配分するやりかたでは、大規模な都市改造計画やスラム解消団地などがうまく行かないと述べている、これは中央集権から都市国家指向への変更であり、アンチ・グローバリゼーションである。

さて晩年の世界銀行との対談で次のように言っている。「最も重要な考え方は、農業時代の凶作の経験から直接生まれました。これは供給、需要、価格の間には、なんらかの関連があるという考え方です。豊富にあるものは稀少なものと違って価格が安く、使い捨てにしてもまったくといっていいほど、残念に思うことはありません。森林は豊富にあると見られていました。不愉快なことですが同様に、土壌、水、新鮮な空気も豊富にあるため、安価で自由に使えました。今でもこのように考える人はたくさんいます。ありあまるほどいる人間の命は、安価で自由に使えると解釈されるかもしれません。そうであったら、普通の愛国心の強い市民が異常な殺裁を受け入れ称賛するようにさえなったでしょう。異常な殺裁とは、暫壕戦、マスタードガス攻撃、意図的な飢僅、ドイツの電撃戦、カミカゼやナパーム攻撃、ジェノサイド、民族浄化、ジハード、自爆テロ、地雷、さらには、説得力はあるものの狂気の超愛国主義者の狂気のビジョンにとって、その存在が不都合になった人たちを無差別に死に追いやったことなどです。」

著者は世界の現状を地獄絵として見せてくれているように思える。鈴木志朗

posted by 建築ネット at 13:42| ニュース

2022年04月22日

最近読んだ本 2021.1#1 ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか 近距離移動が地方都市を活性化する

最近読んだ本 2021.1#1 ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか 近距離移動が地方都市を活性化する著:村上 敦 学芸出版社

私は日本人の書いた本はほとんど読まない、著者は日本人だがドイツ在住で、都市交通計画のコンサルタントをしている。ドイツ南西部フライブルクを例にどの様な経過をたどってモータリゼーションや人口減少による国の破綻を防いで、先の道を探ってきたか、逆になぜ日本はコンパクトシティと地方の過疎化対策に失敗し、国の経済破綻を招いたかを論じている。私の住んでいる市も国の方針とやらで闇雲公共施設統合、縮小を進め箱物の造り替えと、中心部に大規模な駐車場、商業施設の整備などに金を掛けようとしている。著者は、人口減少と高齢化の中で、地方の小都市で高速の道路で、より大きな行政、商業サービスのある都市と結ばれるのを望んでいるのは奇妙だという。大きなインフラ建設業者や、マイカー関連企業は地元に利益を落とさず全て吸い上げてしまう。高齢の運転者に免許返納を呼び掛けているように、徐々にマイカーは減って金のかかった道路は無駄となり、買い物、行政サービス難民が増えるのが見えているのにと。また大都市側も中心部の高価な土地資源を失い、高くついた道路は車の増加で交通渋滞が起きて使い物にならなくなる。これを信号システムや自動運転などハイテクでカバーしようとしても、又大企業が利益を得るだけで地方経済に還元は無い。興味深いのは交通を高速化しても、市民の外出時間短縮、回数減にはならず、その分周りに何もない郊外の大規模店に行くという統計が出ていることだ。ドイツは1970年ごろマイカー社会を、低速の市電に方針転換した、これも結構高くつくが地元の電力会社などの企業が補填して、経済の小さなサイクルを回すようにしてきた。さてこの先はどうするのか、グローバルな温暖化対応、サスティナビリティの観点から行き着いたのは究極の低速交通、自転車と徒歩である。驚くべきことに全く信号や標識、道路の線引きの無い街、これを道路を自動車、自転車、子供の遊び場などに使う意味でシェアードスペースと言うが、幹線道路が交差する所に試験的に造り、ヨーロッパの他の都市でも追従が始まっているという。必ず行き詰まり・提案・反対・試行・修正を経て、粘り強く進んで来たのだ。

鈴木志朗建築事務所・NPO建築ネットワークセンター


posted by 建築ネット at 11:00| 最近読んだ本